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並の正確さでは不十分 ランゲ自社製ヒゲゼンマイ

F. A. ランゲの長男として生まれたリヒャルト・ランゲは、数々の発明と特許技術で高級時計産業の発展に多大な貢献をしました。最も重要な発見は、ベリリウムをヒゲゼンマイの材料である合金に添加するというもので、今日までほぼすべての機械式高級時計に使用されている製法です。これは高級時計産業にとって精度の向上をもたらすもので、リヒャルト・ランゲは1930年にこの製法の特許を取得しました。

リヒャルト・ランゲの肖像写真

リヒャルト・ランゲ(1845-1932年)

リヒャルト・ランゲによるヒゲゼンマイ用金属合金の特許明細書

「時計ゼンマイ用金属合金」で1930年に特許第529945号を取得

ヒゲゼンマイは機械式時計の心臓部であり、歩度の正確さを左右する重要な部品です。そのリボンのような金属帯の厚さがわずか0.001ミリ狂うだけで、ゼンマイの種類によっては、歩度が1日あたり約30分も変わってしまいます。ヒゲゼンマイの製作は、精密時計の工程の中でも最も難しい工程に数えられます。それにもかかわらず、寸法公差は0.0005ミリという驚嘆に値する精密さです。ヒゲゼンマイを内製できるマニュファクチュールは世界中でもほんの一握りしかありませんが、ランゲはそのうちの1社であり、製造されるヒゲゼンマイの品質が特に高いことで知られています。A.ランゲ&ゾーネでは、特殊な計算式を用いて、キャリバー1個1個に対して最適なヒゲゼンマイを作っています。

ティノ・ボーベ、ヒゲゼンマイの内製を語る

数学的厳密さを手作りで

ゼンマイ材を何度も引抜き型に通して、取り付けるモデルに適切な直径にする

手順1:引抜き

製作が始まるときのゼンマイ材の直径は0.5ミリです。手順1は、このゼンマイ材をさまざまな直径のダイヤモンド製引き抜き型に通す作業です。ヒゲゼンマイをどのモデルに使用するかによって、多いものでは32段階もの引抜き工程を経て適切な直径にします。例えばリヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー “テラ・ルーナ”に取り付けるものは、直径わずか0.059ミリです。

極細になったゼンマイ材を転がして必要とされる最終寸法に仕上げる

手順2:ロール

極細になったゼンマイ材を転がして正確に最終寸法に仕上げます。ゼンマイ材は粗ロール作業と仕上げロール作業を経て、モデルによって厚さ0.022~0.044ミリ、幅0.08~0.17ミリになります。その際にランゲが許容する誤差は1万分の1ミリで、これは髪の毛1本の直径の百分の1にあたります。このような単位になると、レーザーを使った測定による品質検査だけでは十分とはいえません。万全を期すため、さらに微量天秤で重量を量って、帯状の鉄線が規定の長さになっていることを確認します。

ゼンマイ材を適切な長さに切り、螺旋形状にする

手順3:切断と巻上げ

その次に、ゼンマイ材を指定の長さに正確に切り、それに続いてゼンマイ特有の形状にします。ゼンマイ材があるべき曲線を正確に描くように、3本から5本のゼンマイ材を重ねて巻き上げます。この本数は取り付けるモデルによって異なります。これらのゼンマイ材を熱処理後に再びばらします。すると、ゼンマイが「呼吸」(振動)をするための隙間が、指定どおりの寸法でできあがります。

熱処理:渦巻き形状に巻き上げたゼンマイ材を加熱して形状を固定します。

手順4:熱処理

巻き上げたゼンマイ材を12時間にわたって特定の温度サイクルで加熱し、慎重に冷却します。ゼンマイはそのあるべき形状に固定され、望ましい強度になります。ゼンマイは、わずかな誤差や不具合だけでも使い物にならなくなるため、常時、温度を記録しながら測定データを評価して温度サイクルを厳正に監視します。

手作業でヒゲゼンマイの端を規格どおりに正確に曲げます。

手順5:曲げ

A.ランゲ&ゾーネでは、ゼンマイ1本1本の曲げ点を特別な計算方法で正確に求めています。ステンシルにゼンマイを固定して、顕微鏡で見ながらゼンマイの端を専用プライヤーで曲げます。この曲げ作業には人並み外れた指先の繊細な感覚と正確さが求められるため、ヒゲゼンマイを製作できるのは、その道で経験と研鑽を積んで技術を磨いてきた職人に限られます。

ヒゲゼンマイとテンワを組み立てます。

手順6:組立て

最後の手順は、ゼンマイとテンワの組み立てです。理想的な精度を得るため、テンワごとにぴったり合ったヒゲゼンマイを選びます。高感度振動計測装置で、理想的な組み合わせのゼンマイとテンワを見つけ出し、A.ランゲ&ゾーネの時計に取り付けます。

A.ランゲ&ゾーネの世界

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