機械式時計の動力制御メカニズムは、ゼンマイが完全に巻き上げられた状態でも、ほとんど解けてしまった状態でも、脱進機をできる限り一定の力で作動させるという役割を担っています。
安定した精度:特許技術の動力制御メカニズム
マラソンランナー並みの持久力
リヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー“テラ・ルーナ”は、大きく強力なゼンマイを二つ備えるツインバレルで14日分のパワーリザーブを提供します。ランゲ31では31日分にもおよびます。この動力制御メカニズムは、マラソンランナーと同じように大量のエネルギーを必要としますが、もっと大切なことは、自分自身の力を上手に分けて使うことです。これほどの動力を一度に蓄えるとなると、シングルバレルでは、完全に巻き上げたときのトルクが脱進機に直接伝達するには大きくなりすぎます。さらに、トルクの減少とともに、パワーリザーブが無くなる頃には精度が落ちてしまいます。パワーリザーブの持続期間全体にわたって時計の歩度を安定させるため、上述の2モデルでは、ツインバレルと脱進機の間に特許技術の動力制御メカニズムが組み込まれています。
このメカニズムは、ツインバレルのエネルギーを10秒毎にごく少量ずつ放出します。そのエネルギーによって、動力制御ゼンマイがその都度60度だけ巻き上げられます。この時、動力制御ゼンマイに蓄積されるエネルギー量は、その後10秒間にガンギ車、アンクル、ヒゲゼンマイに供給されるエネルギー量と同じです。動力制御ゼンマイから放出されるエネルギー量は毎回まったく変わらないため、主ゼンマイを巻いてから何日経過しても、時計の動力は常に一定に保たれることになります。その結果、振り角が一定し、ひいては歩度も目覚ましく安定します。動力制御メカニズムの動力制御ゼンマイとヒゲゼンマイを自社工房で製作していればこそ、ムーブメントと最適な調整ができるのです。
飛び掛かるピューマのように
ツァイトヴェルク・モデルの動力制御メカニズムは、脱進機に一定の力を供給するだけでなく、それと同時に瞬転式数字ディスクを進める力を生成します。獲物に飛び付こうとしているピューマのように、動力制御メカニズムは大きな瞬発力を供給しなければなりません。このメカニズムは、ちょうど60秒ごとに巻上げプロセスを実行するように設計されています。巻上げプロセスの間に一瞬、香箱の全トルクが放出されます。間髪をおかずにこの力を利用して、数字ディスクを進めるのです。
ツァイトヴェルク ファミリー
機械式時計の新時代到来
空中静止するハチドリのごとく
リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンドでは、動力制御メカニズムとジャンピングセコンド機構が二組の輪列に別々に割り当てられています。しかし、この二つの機構は切っても切れない関係にあります。ハチドリが空中の1点にとどまるために高速で羽ばたくように、動力制御メカニズムも瞬時に高速で連続運動をしなければなりません。1秒に一度、香箱が瞬間的にトルクを放出します。それと同時に秒針が1秒分だけ先に進むと、動力制御メカニズムのゼンマイが少しだけ巻き上げられます。他方、時計は一定の動力で正確に時を刻みます。