一覧へ戻る

機械式デジタル時計の新たな姿 瞬転数字メカニズム

完璧な機械式デジタル時計を開発しようという試みは、これまでにも何度となく行われてきました。しかし、さまざまなアプローチにもかかわらず、信頼性と良好な視認性を備える設計はいまだかつて実現されたことがありませんでした。そのため、ランゲの時計マイスターたちは、これまでとは違うまったく新しい道を歩む必要があったのです。これまでに知られている手法のなかで最も単純なものとしては、数字ディスクが常に回転し続けるスイープ式の表示があります。このタイプのものは、数字が斜めになっていることが多く、そのサイズも小さいうえに、分表示用ディスクが細かく分割されていることが、視認性の大きな障害となりました。これに対して瞬転数字メカニズムでは、分を表す数字を2枚のディスクに分けて表示するため、数字サイズの大幅アップが可能になります。19世紀に製作された懐中時計にも同じような設計の例があり、パルヴェーバー方式やデュルシュタイン方式と呼ばれています。ただ、構造上の理由からやむを得ない配置であった、上(時)から下(分)の方向に時刻を読み取るという点が、なんともぎこちない印象を与えました。しかし、この方式の最大の弱点は耐久性にあり、数字を先に進める際にかかる大きな力による摩耗が大きいという問題があったのです。

考え抜かれたメカニズム

 

この問題を克服したのが、ランゲの瞬転数字メカニズムです。一般のデジタル時計と同じように、左から右に向けて時刻を読み取ることができます。さらに、このメカニズムが常に支障なく機能し続けることを保証するためにとりつけられたファンが、数字を進める度に発生するエネルギーを吸収する設計です。

瞬転数字メカニズムの分解斜視図

01  洋銀製タイムブリッジ

02  透明なサファイアクリスタルの受け石

03  0~5の数字が付いた十の位用分ディスク

04  0~9の数字が付いた一の位用分ディスク

05  1~12の数字が付いた時リング

機能の仕組み

 

最善の視認性を実現するため、時と分を同じ軸上に同じ大きさで表示します。分表示は2枚のディスクで構成されています。0~9の数字が付いた一の位用分ディスク(4)と0~5の数字が付いた十の位用分ディスク(3)の両方が、1本の軸に取り付けられています。分ディスクを1分単位で正確に回転させるのは、動力制御メカニズムです。60秒経過するごとに動力伝達歯車と同一軸上にあるカナを介して、72度だけ瞬転させるエネルギーがディスク機構に供給されます。

 

このカナは瞬時に回転して、一の位用分ディスクを支持する歯車の歯を捉えます。するとその歯車が、十の位分ディスクを支持する歯車の歯とかみ合います。切替軸で連結されているこの歯車の下側には、ルビー付き爪が付いています。一の位用分ディスクが1周する度に、すなわち10分ごとに、一の位分ディスクが9から0に切り替わると同時に、ルビーが10分軸の6歯カムを捉えて60度回します。その動きと連動して、十の位用分ディスクが1単位だけ進みます。

 

十の位用分ディスクが回転する瞬間以外に10分軸が動くのを防止するため、2個の相互にかみ合う作動防止部品が切替軸と10分軸に取り付けられています。これに対し、一の位用分ディスクには作動防止部品を取り付ける必要はありません。これは、一の位ディスクは動力制御メカニズムの制御カナに直接連結しているからです。つまり、時刻表示が切り替わる時以外は、動力制御メカニズムは固定されているという訳です。

 

10分軸が1周すると、1~12の数字を付けた大きな時リング(5)が回転します。この動作のために、時中間車の4歯カナにかみ合う歯を1本だけ持った歯車が10分軸に付いています。十の位分ディスクが5から0に切り替わるときには、時中間車が90度だけ回転します。この切替え時以外に時リングが誤って作動しないように、10分軸と時中間車の間に作動防止部品が取り付けられています。

 

この非凡な構造には、革新的な時刻合わせメカニズムが必要です。リューズを引いてムーブメントを停止すると、動力制御メカニズムの制御アンクルによってディスク機構全体が動かなくなってしまいます。この状態を克服するために、一般的な時刻合わせメカニズムとは異なる革新的な構造を設計しました。

 

時刻を合わせるときに、動力伝達歯車が保持している突起の先端上でローラーが動きます。この時、この突起に接合されている軸が厳密に定義した角度だけ回転します。それにより、時刻表示を分単位でしっかりかみ合うように調整できるのです。突起上でローラーが跳ねる様子を、サファイアクリスタルのシースルーバックから見ることができます。

 

A.ランゲ&ゾーネの世界

最新情報をお届けします

新作やイベントに関する最新情報だけでなく、腕時計という小さな空間に凝集された職人技の魅力をお伝えします。

ニュースレターの配信を申し込む